勇壮な鎧武者が覇を争った戦国時代。戦国の合戦と聞くと、多くの人が刀での斬り合いや、当時の最新鋭武器であった火縄銃の応酬を思い浮かべるのではないでしょうか。
戦場ではさまざまな武器が使われましたが、主力だったのは「槍(やり)」です。
今回は、槍の中でも特に有名な「天下三名槍」の一つ「御手杵(おてぎね)」のレプリカや、結城氏の歴史に触れることができる美術館「結城蔵美館」を訪れました。
かつて「下総(しもうさ)の国」と呼ばれた地域にある結城市。その地を治めた結城氏とは、どのような歴史を持つ一族なのでしょうか。そして、天下三名槍とはどのようなものなのでしょうか?
結城市の歴史や芸術・文化を発信する結城蔵美館
結城蔵美館は、JR結城駅北口から徒歩約15分の場所にあります。道中には歴史を感じさせる建物が数多く残っており、街を歩くだけでも楽しめる魅力的なエリアです。

こちらは結城蔵美館の外観です。昔ながらの趣を感じさせつつ、どこか新しさも漂うデザインが特徴的です。白い壁が美しく、街並みに溶け込んでいますね。


館内は本蔵(ほんぐら)と袖蔵(そでぐら)に分かれています。
本蔵では、地域の作家による作品展示会などが定期的に開催されており、訪れるたびに新しい展示を楽しめます。
私が訪れた2025年3月15日には、「龍」をテーマにした銅版画展が開催されていました。平面に描かれているにも関わらず、まるで飛び出してくるかのような迫力があり、思わず見入ってしまいます。


入り口付近にはちょっとしたお土産コーナーもあり、かわいらしいグッズが並んでいました。結城蔵美館を訪れた記念として、ちょうど良いお土産が見つかるかもしれません。
鎌倉より続く結城氏の歴史
本蔵を抜け、結城氏の歴史を深く知ることができる袖蔵に移動しました。


袖蔵には、結城氏の歴史を伝える貴重な資料がたくさん展示されています。
歴史を実際に見たり体験したりしたことのある人はいません。しかし、こうした資料を通して、過去に何があったのか、当時の人たちがどのような思いで生きていたのかを知ることができます。
歴史を客観的に分析し、未来へと繋げるためにも、このような展示の意義は大きいと感じました。


展示パネルには、結城氏の歴史がくわしく解説されています。
最初の武家政権である鎌倉幕府の時代、今から840年以上前に、この地を治めた結城氏。由緒ある名家であり、戦国時代の終わりまでこの地をしっかりと守り続けました。
また、結城氏には徳川家康の次男・徳川秀康が養子として迎えられ、「結城秀康」と名のったことも、歴史好きならご存じかもしれません。徳川一門の血も受け継ぐ結城氏は、その後も存続し、現在に至るまで歴史に名を残しています。

結城氏の系図も展示されており、その家系が18代にわたって続いていることがわかります。
戦国時代のような「弱肉強食」の時代にあって、これほど長く続いたということは、結城氏が高い実力と政治力をそなえていたことの証といえるでしょう。
歴史の重さ込み?三名槍「御手杵」とは
館内を進んでいくと、天下三名槍の一つである御手杵に出会いました。

日本の歴史上、特に有名な三本の槍を指す「天下三名槍」。
戦国時代の槍にはさまざまな形状や長さのものがありますが、この御手杵はとくに大きなものだったのでしょう。あまりの長さに、写真におさめるのもひと苦労でした。
残念ながら、元の御手杵は第二次世界大戦の空襲で焼失してしまい、現在飾られているのはレプリカです。レプリカでもその迫力は十分に伝わりますが、実物がどのようなものだったのか、ぜひ見てみたかったですね。

刃の部分である穂(ほ)と、持ち手の部分である柄(え)。
ふたつを合わせると全長4メートル以上にもなる御手杵。持ち運ぶだけでも大変ですし、これだけの逸品を傷つけないように扱うためには、細心の注意が必要だったことでしょう。

館内にある説明によると、御手杵は実際に戦場で使われることは少なく、象徴的な意味合いで用いられることが多かったようです。
確かにこの大きな槍を実際にふるうのはかなりの力が必要でしょう。しかし、美しく大きな槍をかかげた大将が後ろに控えているだけでも、前線で戦う兵士にとっては心強かったかもしれません。

一階から二階にのびる御手杵。縦にしてみると、その長さがよりわかりますね。戦場のどこにいても目立つシンボルとしての役割を果たしていたことは間違いないでしょう。

館内には御手杵の重さを体感できるコーナーもあります。実際に手にとってみると、ずっしりとした重みが伝わってきます。
当時の武将たちは、こんな重い槍をどのように扱っていたのか?そんな想像をしながら持ち上げてみるのはおもしろい体験でした。
多くの御手杵ファンも訪れる
御手杵を語るうえで外せない話題のひとつに、刀剣を擬人化したゲーム「刀剣乱舞」があります。
このゲームでは御手杵も擬人化されており、ファンのあいだでも人気のある刀剣男子の一人です。
御手杵にゆかりのあるこの地には、応援の気持ちも込めて多くのファンが足を運んでいます。




館内には、刀剣乱舞のミュージカルで御手杵を演じた俳優のサインも展示されており、御手杵がたくさんの人に愛されていることを実感しました。
近年、歴史や刀剣に興味を持つ人も増えてきました。
結城氏と御手杵について知りたい人は、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか?
結城蔵美館
住所:茨城県結城市結城1330
アクセス:JR水戸線「結城駅」北口から徒歩15分
TEL:0296-54-5123
営業時間:9:00-17:00
定休日:木曜日(祝日の場合は翌平日休館)、年末年始